山笑う

去年の夏からクワガタを部屋で飼育している。

春に切ったりんごの木を燃料として使うため、夏の農閑期に薪割りをするのだが、その際に朽ち木から出てきたコクワガタの雄である。

少しの間だけ飼育してまた山に戻すつもりだったが、ほぼ土の中から出てこない。たまに心配になって土を掘り起こすと元気に生きている。夜中に動いている気配もない。

狭い虫かごの中で不自由させていると感じるのは人間の思い込みで、クワガタは敵に襲われることもなく、探さなくても餌のあるこの環境を謳歌しているのではないかと私は考え始め、そのまま今まで部屋で飼育してきた。

その後も彼が土の中から出てくるのを見ることはなく、たまに掘り起こして生存確認をするという日々だったが、つい先ごろから夜中にカサコソと物音が聞こえるようになったのである。

何かわからず少し気味が悪いと思いながらもそのまま眠ったのだが、次の日もまたカサコソと音がした。原因を探ろうと思った時、ブーンと羽の音がしてクワガタだと気が付いた。

羽ばたいてはすぐにカゴのフタにぶつかる音を聞ききながら、

今までずっと大人しかったとはいえ、部屋に自分以外の生き物がいることをすぐに思い出せなかったことを少し恥ずかしく思った。

やはり暖かくなったら山に放とうと思っている。

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